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2020年秋蒔きをめざして…自然小麦の会「KOMUGI365」

2020年2月9日、長野県小県郡青木村にて、自然小麦の会「KOMUGI365」設立準備会が開かれました。
自然小麦の会「KOMUGI365」とは、
・農薬や化学肥料に頼らず小麦を栽培する人(小麦農家)
・安全な原材料をもとに、パンやお菓子を作る人(パン・菓子職人)
・除草剤やポストハーベストなど不使用の、良質な小麦のパンを食べる人(パン購入者・応援者)
が、互いに尊重し、認め合い、協力してパン文化が地域に根付く活動を行うことを目的とする会、です。
そのことによって、「将来世代に健康な土と健康な食を手渡す」という、真の目的を実現させたいと考えています。

いずれ「KOMUGI365」としてのホームページを開設することになると思いますが、それまでの間、設立準備会までの道のりと、準備会で話し合われた内容をここにまとめておきたいと思います。ご興味を持って下さる方、賛同して下さる方、ご一読いただけたら嬉しいです。

目次

設立までの流れ

上田市塩田、峰村さんの小麦畑

「KOMUGI365」設立までの流れを、ざっとご説明します!
…といっても、長くなってしまいました! ハルが上田に移住して以来の、8年間の実験や話し合いなどをまとめてあります。

地元の、無農薬の小麦でパンを作りたいという思い

最初は、石窯パンハル(旧ベーグル屋ハル)の「地産地消を、無農薬で実現できないか?」という思いから始まりました。いくつかの農家さんに打診し、「無農薬で小麦を育てていただけませんか?」と依頼。ある農家さんからは「もしも赤さび病が出たら、すべて買い取るという条件付きなら」と、言われたことも。そんな色々があった後で、青木村のyoshitomoさんや、上田・塩田の峰村さんが引き受けてくれることになり現在に至ります。

パン屋と小麦栽培の両立は大変!

実は、ハルは小麦栽培にもチャレンジしました。2015年秋~2016年初夏収穫の1回だけでしたが、炎天下での草取りや、ご近所からの「雑草を取れ!」との苦情(笑)、さらには体調を崩し…。やはり小麦は農家さんに! と痛感。

自然栽培小麦の栽培は夢物語じゃない

ど素人のハルでも、一応、無農薬で収穫までたどり着けたのですが、yoshitomoさんも小麦栽培にチャレンジしてくださって、「これならいける」と思われたそう。小麦を育てた後の畑は雑草が少なく、葉物栽培などに良いというメリットも。翌年は作付面積も増やし、穫れた小麦の生かし方を模索し始めました。

試行錯誤した製粉のこと

ハルではドイツ製の石臼を使用しています。

小麦は、表皮が中身に食い込んだ構造をしているため、製粉は少し厄介です。ハルでは店に小さな石臼製粉機を持ち、製粉もしていますが、これは表皮ごと使う分であって、やはり製パンにはベースとなる白い粉も必要。
そこで、青木村の共同製粉所で細かく挽き、ふるい分けて、白とベージュ色の中間位の色合いの粉を得ることができるようになりました。
灰分はおそらく比較的高く、真っ白でふわふわのパンはできませんが、カンパーニュなどの素朴なパンにはむしろ合っていると思われます。また、白い粉とブレンドすれば、さらに用途は広がることでしょう。
ちなみにハルでは現在、石臼挽きの自然栽培小麦粉を20%、細挽き自然栽培小麦粉を30%、柄木田製粉さんの特華梓を50%の割合でカンパーニュに使用しています。品種はすべて、長野県の品種「ゆめかおり」です。

店で挽いている全粒粉についても、工夫があります。自家製粉を始めてからしばらくの間は、パンを食べると「ジャリッ」とする時があり悩んでいましたが、神戸のベッカライ・ビオブロートさんの本に「精米機にかけてから製粉すると良い」と書いてあり、それを取り入れると、小麦表皮の固い部分が取り除かれ、違和感のない香ばしい粉ができるようになりました。まず精米機、それから目視で小石などの夾雑物を取り除き、製粉しています。

地元でのオーガニック&フェアトレードを実現させたい!

無農薬の小麦栽培を続けて行くためには、やはり小麦の価格設定が重要。手間暇かけて小麦を育てる農家さんたちが、生活を成り立たせることができる価格で買い取ること。無農薬小麦の価値を伝えながら、農家さん↔パン屋↔お客さまの間で、フェアトレードを実現させていく必要があります。
買い取り価格についても話し合いを重ね、JAを通じて流通している県産小麦粉の約2倍での買い取りと、それに基づいたパンの価格設定をし、販売することができています。


長野県だけでなく、日本の小麦の最大の産地・北海道でも、小麦の生産量は年々低下しています。「明日焼くパンに使う粉が無い!」となってからでは間に合わないので、今の内から、顔の見える関係での安全な小麦の確保を、自分たちの手でやっていかなければなりません。

その結果、耕作放棄地が無農薬の小麦畑になり、新規就農の若手が増え、オーガニック給食や食・住環境の良さを求めて子育て世代が移住して来てくれるようになれば、地域の存続にも貢献できるはずです。

「KOMUGI365」の考え方

2015年秋~2016年初夏、ハルが小麦栽培をした上田市・塩田の畑

それではいよいよ本題に!!!

「会員は、ライバルではなく高め合う仲間であり、互いを尊重し認め合うこと」。これをまずは明記しておきます。
「将来世代に健康な土と健康な食を手渡す」という目的に向かって、前を向いて行きたいですね!

現在の問題点

まずは、現在の問題点を整理しておきます。

農業者が抱える問題

・耕作放棄地の増加
・農作物の鳥獣被害
・農業者不足(特に若者)
・農業で生計を立てることが難しい

パン屋が抱える問題

・ポストハーベストの問題がある輸入小麦
・安全なパン用の国産小麦不足
(2020年現在、柄木田製粉さんは長野県産小麦を新規パン屋に卸すことを断っている状況。現在営業中のパン屋でも、今まで使ってこなかった種類の粉は購入できないとのこと)
・日本の小麦消費量年間600万トンのうち、500万トンが海外産小麦(2017年データ)。主流の海外産小麦が小麦とパンの標準価格を下げてしまうため、国産や無農薬栽培などの安全な小麦粉を使っても、適正な価格で販売することが難しい

パンを食べる人が抱える問題

・除草剤やポストハーベストなどを使わない安全な小麦のパンが少ない
・学校給食にも、ポストハーベストの含まれる海外産小麦が使われている

解決策としての「KOMUGI365」

上記の問題を、「KOMUGI365」の活動を通じて解決していきたいと思います。
具体的には、以下の事項です。

・無農薬の小麦を安定的に生産するための技術の確立
・シカやイノシシなどの獣害対策
・無農薬小麦を生かした製パン技術の学び合い
・安全なパンについての知識を共有し伝えていく
・無農薬の小麦粉が、余剰や不足なく、お客様まで届く仕組みを作る
・地元でのオーガニック&フェアトレードを実現させる

「学び」と「交流」の場を作る

日本にパンがはいってきたのはわずか100年ほど前。その歴史は、イースト(酵母菌)で発酵させるパンが世界的に広まってきた歴史と重なり、日本人には「本来のパン」という記憶がそもそもありません。しかしながら、人間は4400年も昔から、小麦粉を発酵させてパンを焼いてきたのであり、その発酵には、酵母菌だけでなく乳酸菌が大きく関わってきました。

そして農薬の歴史も、イーストの歴史と見事に重なるものです。「KOMUGI365」では、イースト使用、農薬使用とはいったい何だったのか、人や環境に与えてきた影響を振り返りつつ、本来の無農薬小麦栽培、本来の自然発酵のパン種でのパン作りを取り戻していこうという試みでもあります。

体験型の学びと交流

小麦の種まき、収穫、麦踏み体験などを、会のイベントとして開催。無農薬の小麦畑を身近に感じ、農業者、パン屋、食べる人が交流できる場を作ります。

小麦について、発酵についての特別授業

長野県の強力小麦粉用品種「ゆめかおり」開発者のお話や、自然発酵のパン種に含まれる微生物とその役割の話、また、製粉や粉についての知識、小麦栽培のノウハウなどの勉強会を開催。小麦やパンの発酵についての知識を会全体で深め、それぞれのお客様に発信しやすい情報を共有していきます。

パンの販売について

パンの販売については、現在検討中ですが、以下のようなことを考えています。

「KOMUGI365」としての、小麦とパンの販売基準について

小麦の無農薬栽培を目指す農家さんにも参加してもらいたいため、今現在、無農薬栽培であるかどうかは問いません。しかし、「KOMUGI365」として販売する小麦は、無農薬栽培のみとします。

パン屋も同じく、「KOMUGI365」として販売するものには、もちろん「KOMUGI365」の小麦粉を使用すること(100%でなくても可)、イーストではなく自然発酵のパン種を使用する、添加物不使用などの基準を設けます。

小麦栽培についても、パン作りについても、昔ながらの理にかなったやり方をすることで、会としての個性を打ち出していく方針です。

パンマルシェの開催、イベント出店など

「KOMUGI365」のパンマルシェを開催したり(青木村の道の駅など)、各地でのパンマルシェなどのイベントに会員が商品を出し合って「KOMUGI365」として共同出店することなどを考えています。

有機給食の働きかけ

長野県で「有機農業推進プラットフォーム」という会ができ、「信州オーガニック議員連盟」もでき、有機農業や有機給食への関心が高まっています。地元の無農薬小麦を使ったパンを、地元のパン屋が手分けして作り、学校給食で使ってもらえるような働きかけもしていきます。
愛媛県今治市の事例では、2001年から地元産小麦粉のパンを学校給食で提供し始め、2001年には2週間分しか提供できませんでしたが、作付面積を増やし、現在では年間の6~7割程度のパンを地元産小麦でまかなっているそうです。

パン屋持ち回りパンセットの販売

都市部の会員さんが増えて来たら、「KOMUGI365」会員パン屋が持ち回りで、会員さんのご自宅へ宅配で届けるパンセットも販売したいと考えています。

「KOMUGI365」今後の計画と目標

1年目

・パンマルシェ開催
・農業体験(小麦畑見学、収穫体験、麦踏み体験など)
・講演会・勉強会
・出張共同出店(青山ファーマーズマーケット、各地のパン祭りなど)
※青木村の助成金活用(獣害対策の電柵、パンマルシェ開催費用など)

2年目

1年目と同様
※青木村の助成金に加えクラウドファンディングも活用

3年目以降

・共同製粉所や冷蔵庫、石臼製粉機など導入
・長野大学など地元大学と連携したPR活動
・銀座NAGANO出展
・発酵祭り・展示会などに出展
※元気づくり支援金活用

古代小麦やライ麦なども

栽培方法、製粉方法などを皆で勉強しつつ、希少な古代小麦やライ麦の栽培にも取り組んで行きたいと考えています。

2020年秋の種まきに向けて、会員募集いたします!

2020年3月または5月に(日程は2月19日現在調整中)、「KOMUGI365」説明会を予定しております。説明会と合わせ、長野県の小麦品種「ゆめかおり」育種担当の方をお招きした勉強会も計画中です。

ご興味をお持ち頂いた農家さん、パン屋さんをはじめ、パンが好きな人、地産地消に興味のある学生さん、そして「すでにうちの店でもやってるよ!」という先輩パン屋さん&農家さんにもぜひぜひ、加わって頂けたらと思っております。説明会参加ご希望の方は、石窯パンハルまでご連絡下さい(以下にお問合せフォームを貼り付けておきます)。詳細が決まり次第ご連絡させて頂きます!

なお、「KOMUGI365」設立準備会において、役員も決定しました。
代表者 宮入えりさん(野菜料理家)
監事  春野里美(石窯パンハル)
会計責任者&事務局 宮入隆通さん(青木村村議会議員・株式会社よしとも代表取締役)
役員は総会において選出し、任期は2年とします。


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